この記事では、ものごとを考えていく上で情報に流されず、情報を一度自分のアタマでキャッチし、よく考えた上で行動に起こそうよ。というとても普遍的なお話です。「意外に出来ていなかった」と感じる方も多いのではないでしょうか。
少し前までの日本企業では、いろいろ自分で考えず「言われた通りにすれば良い」という時代でした。いろいろ考えても上司が白と言えば白、黒と言えば黒、白でも黒と言えば黒なので、「考えても無駄」という世界観でしたね。
しかし、これからは違います。自分で考えない人は大きく変化する時代についていけず、傲慢なおじさんと共に海に沈む運命にあります。
自分の考えを持ち、行動をしていきましょう!一つの企業に固執する時代は終わりました。自分の考えをしっかり持ち、企業に依存せず、勉強を積み重ね、個人で判断し行動する人が活躍できる良き時代です。それではどうぞ!
はじめに
この本は「ちきりん独自の視点」を生み出す思考の方法論をまとめたものであり、「考えるって何だよ?」「何をどう考えればいいのか教えてくれよ!」と感じている人に向けた本です。
序|「知っている」と「考える」は別モノ
ある情報から楽観的なことしか読み取れない、反対に悲観的なことしか読み取れないのは、読み手に最初からバイアスが掛かっているからです。何らかの固定概念、既成概念、すなわち「もともと知っていること」に影響されているのです。
ある人が新しい情報を見た時に、すでに頭の中にある知識をひっぱりだしてきたら新しい思考は生まれません。
知識はちょっと横に置いておき、得た情報から新たに考え始めて、今迄見えていなかった結論に辿り着けるのです。
知識の中で特に影響力の大きいのは、成功体験と結びついた知識です。過去に大成功した記憶が、新しい情報に触れた時にしゃしゃり出てきてゼロから考える事を妨げます。
つまり、誰にとっても自分が詳しい分野において斬新なアイデアを受け入れることは、よく知らない分野においてそうするよりはるかに難しいことです。詳しくなれば成るほど、その分野で新しいアイデアに否定的になる傾向が見られたら「知識が嗜好を邪魔している」ことを疑ってみた方がよいでしょう。
反対に思考力のある人は、自分の専門分野においてさえ革新的で柔軟です。それは彼らが常にゼロから考えているからです。時代が変わり、新しい現象が出てきて、新しい情報に触れた時、過去の知識ではなく、目の前の情報から考えることができるかどうか。それが分岐点になります。
思考とは、以下の様なプロセスのことを言う
ある情報(本書ではプロ野球の未来について)を見た時に、
①良い面はこれとこれ。
②悪い面はこれとこれ。
③どちらとも言えないのは、こういう点。
~そうであるならば~
④良い面をビジネスに活かすには・・・
⑤悪い面を防ぐには・・・
※大切なのは、もともとあった知識を横に置いておくこと。
知識が邪魔をしてくることを認識しておく
知識とは「過去の事実の積み重ね」であり
思考とは「未来に通用する論理の到達点」なのです。
第一章|最初に考えるべき「決めるプロセス」 会議を重ねても何も決まらないのはなぜ?
超重要会議が今日も日本中で行われていることでしょう。
日本のスタッフは有能でよく働くので情報はいくらでも集まります。完璧に分析されたレポートも出来上がります。しかし、何も決まりません。
理由は、みんな「情報を集めて分析する」ことに熱中し「どうやって結論を出すべきなのか」の思考を怠っているためです。
私たちが何かを決めるときは「情報」とは別に「意思決定のプロセス」が必要なのです。
「考える」とは、インプットである情報をアウトプットである結論に変換するプロセスを指します。
【収集&加工された情報】⇒ 思考 ⇒【結論!】
考える時間を見える化する!
「考える力をつけたいですが、どんな勉強方法が有効ですか?」という問いに対し「考える時間を増やしましょう」と答えます。
例えば1日に働いた時間の内、①情報収集 ②分析&加工&グラフ化 ③思考 ④結論の伝達 の中でいったい何時間を③の思考に使っただろう?日々これを意識するだけで考える力は大幅に伸びるでしょう。
第二章|「なぜ?「だから何なの?」と問うこと
情報を見た時にまず考えることは、「なぜ?」と「だから何なの?」の2つです。
★「なぜ?」は数字の背景を探る問いです。数字は何かの減少や活動の結果なので、すべての数字には理由があります。
★「だから何なの?」は、過去の結果がこの数字に表れているのだとしたら、次に何が起こるのか?それに対して自分はどうするべきなのか?と、データの先を考える問いです。
少子化問題の「なぜ?」
①なぜ、戦後すぐの数年間、こんなに出生数が多いのか?
②なぜ、その後は急激に出生数が減ったのか?
③なぜ、1966年だけ出生数が落ち込んでいるのか?
④なぜ、1971年~1974年ごろに再び出生数が増えたのか?
⑤なぜ、1970年代半ば以降、出生数はまた減ってきたのか?
⑥なぜ、最近は出生数と合計特殊出生率が横ばいなのか?
少子化問題の「だから何なの?」
①これからも出生数は減り続けるのか?それとも下げ止まるのか?
②出生数が減ることは問題なのか?
③出生数が減るとどんな問題が起こるのか?
④出生数を増やすためには、どんな方法があるのか?
ちきりんは、考える力をつけるためには、ひとつの情報に対して十分な時間をかけてトコトン考えることが必要。情報収集やグラフ化に1時間かかったのであれば、少なくともそれと同じ時間はそのデータを見ながら考え抜くべきでしょう。
第三章|あらゆる可能性を検討しよう
あらゆる可能性を検討する時の応用編として「概念を要素分解して、あらゆる組み合わせを検討する」という方法があります。
《例:リーダーの要素分解》
ちきりんがアメリカの大学院で学んだとき、リーダーの養成に関する日米の大きな差に気づきました。アメリカではリーダーが採るべき戦略や正しい方法論を学校で教えているということ。「能力」「人間性」「志」がリーダーに必要な素質であることはどこでも同じです。しかし米国には「では、それらの資質がある人が、どうすれば成功できるのか?」を学校で教えるシステムがあるのですが、日本では人に格差をつけるものとして忌み嫌う考えがあり、そのような教育ができる学校がほとんどありません。
「能力」「人間性」「志」といった本来のリーダーシップの構成要素について、その素養をもっている人が効率よく「正しい方法」を身に付けられる機会やしくみを増やしていくことがこれから重要になるでしょう。
第四章|縦と横に比べてみよう
考えるためにもっとも役立つ分析思考とは「比較すること」です。
そして「比較」には「なにとなにを比較するのか」と「どのような点について比較するのか」が大切で、例えば企業の財務分析をする場合は、「安全性」「収益性」「成長性」など比較すべき項目が定番として決まっています
。対象者の基本はまず、競合他社で次が過去と現在の自社が基本です。
その他、競合との時系列比較や、買い物から料理をするまでを題材にAさんとBさんのプロセス比較なども有効です。
第五章|判断基準はシンプルが一番
何かを決める時に、選択肢が多いと悩みますよね。子供をどこの学校に通わせるべきか、どんな職業を目指すべきか。こういう時は「選択肢が多すぎる!」と思うのではないでしょうか?
でも決められない本質は選択肢が多いことではなく、「判断基準がおおすぎるから」です。解決策は「判断基準に優先順位をつける」という考え方です。例えば大企業の採用担当の人に「どんな学生を採用したいですか?」と聞いたら「行動力がある」「責任感がある」「リーダーシップがある」・・・等数多くの条件が上がってきますが、そんな完璧な応募者をさがしていたらいつまでたっても必要な人材を採用することはできないでしょう。大切なのは、「我が社にとって大事な条件」をひとつがふたつに絞り込むことです。ちきりんの独断と偏見によれば、日本の大企業で成功する為に重要な案件は①我慢する力と②空気を読む力です。
余談ですが、上記2点でマトリクスを作ると社会人の特性4分類をぶんせきすることもできます。また婚活女性に見られるふたつの判断基準のマトリクスも参考になります。
第六章|レベルを揃えて考えよう
考える時にくれぐれも注意したいのは「思考のレベルをそろえる」という、ごく当たり前のことです。異なるレベルの事象をごちゃ混ぜにしてしまったら、考え始める前から間違えてしまいます。
例えば最近、消費市場としてアフリカ大陸の可能性を高く評価する意見の中で「アフリカには9億人以上の市場がある」という言い方がされますが、9億人とはアフリカ全土の人口です。しかしアフリカには54ヶ国あり、民族も言語も混在しています。翻ってアジア大陸は35億人以上です。
数字を比較する時や議論をする時にレベルを揃えることはとても大切なのです。
第七章|情報ではなくフィルターが大事
毎年発表される「大学生が就職を希望する企業ランキング」は社会人が見ると苦笑してしまう方も多いのでは?あのランキングは社会を知らない学生がいかに世の中をしらないかを示す資料でもあるのです。
仕事を選ぶ時に学生が通すフィルターが
①業種 ②企業規模 の2つですが、よくよく考えてみると、志望企業をきめるのに就職先の現在の売上高や利益率に何の意味がありますか?企業の利益率とその人の向き不向きにはほとんど関係がありません。
「社会の役に立つ仕事」「自分が成長できる仕事」というフィルターもナンセンスです。社会の役に立たない仕事はありませんし、どんな状況でも自分を成長させる環境は自分でつくることができるからです。
つまり、学生が使っている仕事選びのフィルターはほとんど役にたたないものばかりということが分かります。
しかし少し働けば(特に就職先との相性で失敗した人は)「自分に必要なフィルター」ははっきりと見えるようになります。例えば研究者を目指すのであれば、「狭く深い仕事」を「1人」で取り組み、「成果が出るのは十年以上」という仕事の特性に合った人でしょう。反対に「広く浅く」「チームで働き」「その日、または短期で成果がわかる」仕事にむいている特性の人といった感じで、働く際に「自分に必要なフィルター」を見つけ、判断することが大切です。
①成長の仕事・・伸び盛りのベンチャーや海外の成長市場で働く仕事
②支援の仕事・・専門分野に関する深い知識が求められる仕事
③運営の仕事・・巨大で複雑な仕組みが万事うまく回る様に整える仕事
④再生の仕事・・求められる判断が撤退、売却、リストラなどを担当
家電市場においても、長く日本では「価格」と「機能」というフィルターで選ばれてきましたが、今では欧州ブランドのデロンギやティファールなどが「デザイン」という新しいフィルターを持ち込みました。
第八章|データはとことん追い詰めよう
・主要国の自殺率・動機・男女・年齢の比較(風習や文化、宗教の違い)
・日本の自殺の動機別集計
・日本の自殺の男女別・年齢別集計
・自殺率が増えた時の社会情勢(好景気・不景気・事件・出来事と比較)
各人それぞれが考え、出てきた考えをみんなで共有し「なぜ自分はそう考えたのか?」思考の結果とそれに至る道筋を共有することに意義があります。
そのプロセスを通して自分とは異なる思考法を学ぶことで、ひとりひとりが考える力を伸ばすことができるのです。
第九章|グラフの使い方が「思考の生産性」を左右する
じつはさまざまな情報をどんな形のグラフにするかということが「思考の生産性」に大きな影響を与えます。もともとの情報に価値があってもそれを拙いグラフに加工してしまうと、間違った結論に導かれてしまうこともあるのです。
①円グラフ・・・一つの内容を要素別に表わすには最適
②棒グラフ・・・推移の結果を時系列で要素別に表す時は棒グラフが最適
棒グラフの生産性をグッと高める階段グラフ
階段グラフとは棒グラフの各要素を横にずらして表示するグラフで、落ちる様子が滝と似ているところから「滝グラフ」とも呼ばれています。
思考の可視化「仕事は人生においてとても重要だ」
下記二つの図に使われている言葉は同一ですが、ふたつの図から異なるメッセージをうけとることでしょう。それは思考を文字情報ではなく視覚情報としたものであり、思考を言語化するよりもより突き詰めて考えることが求められるのです。
終|知識は「思考の棚」に整理しよう
序章で「考えるためには、知識と思考を区別することが重要」と書きました。知識がしばしば思考の邪魔をするからです。
だからといって知識が役に立たない訳ではありません。知識は思考のために活用するべきだし役立ちます。
ちきりんが考える「知識」と「思考」の最適な関係は、「知識を思考の棚に整理するというものです。
思考の棚に知識を整理して入れ込むことで、個別の知識が意味を持ってつながり、全体として異なる意味がみえてくることがあります。そういった「統合された知識から出てくる新たな意味」が「洞察」と呼ばれるものとなります。
重要なのは、ある時に自分が手に入れた知識を思考の棚に整理しておき、格納し、つぎに入れたい情報に常にアンテナを張っておくことなのです。そうすることにより、ある時どこかで必要な知識を見かけたときに、すぐにその知識や情報の存在に気が付き、思考の棚に整理して入れ込み、新しい洞察を得ることができるようになります。そして事前に欲しい知識が入手できたときに出せる結論を事前に考えて仮説を立てておくことが非常に大切なのです。
学生の時は暗記を行うことで数学ですら解答パターンを暗記しクリアすることができました。しかし現実の社会においては、誰かがあらかじめ用意してくれた解法が存在しない課題が沢山あることに気づきました。その時にわたしは「解法を知ること」と「解法を考えること」が異なることだと理解したのです。そして「解法を知ろう、覚えよう」としていると「解法を考える力」が全く身につかないことにも気づきました。
自分のアタマだけで考えていると、最初は泣きたくなるくらい幼稚な考えしか浮かんできませんが、考えの深い人や博識な人が近くに居れば、すぐにその人の意見を聞きたくなってしまいます。でもそこをグッとこらえて自分で考えるんです。この「自分のアタマで考える」という非効率ではあるけれども素晴らしく楽しい思考の世界を多くの方に楽しんでいただきたいと思っていますし、その為に、この本が少しでも役立てればと願っています。