

本記事の信頼性
第1章 転職エージェントに登録してみた話
転職について考える時、多くの人がまず思い浮かべるのが転職エージェントではないでしょうか。テレビCMやインターネット広告でも頻繁に目にしますし、「転職するならまず登録」というイメージを持っている方も多いと思います。
実は私も過去に一度、転職エージェントへ登録したことがあります。当時は40代前半。すぐに転職したいわけではありませんでしたが、自分の市場価値がどの程度なのか知りたいという思いがありました。食品小売業で長くキャリアを積み重ねてきた自分が、外の世界でどのように評価されるのか興味があったのです。
また、転職エージェントは一般には出回らない求人情報を持っていると言われます。もしかしたら自分も知らない魅力的な企業や、新しいキャリアの可能性に出会えるかもしれない。そんな期待もありました。
当時の私は仕事も充実していました。今の会社でやるべきことも残っていましたし、目標もありました。ただ、将来的に”その次”のキャリアをどうするのかを考え始めていた時期でもありました。その意味では、転職活動というより情報収集に近かったのかもしれません。
そして迎えた転職エージェント面談の日。会社から帰宅し、少し期待しながら電話を掛けました。ところが転職エージェントから伝えられた内容は私の想像とはまったく違うものでした。
要約すると「転職しない方が良いと思います」という結論だったのです。
理由も非常に現実的でした。現在の給与水準を維持できる求人がほとんど存在しないこと。地方都市の食品小売業では魅力的な求人が少ないこと。そして仮に転職できたとしても、年収は確実に下がる可能性が高いこと。つまり、今の会社に残ることが最も合理的な選択肢だという話でした。
電話は20分程度で終わりました。
期待していた「特別な求人情報」もありませんでした。転職市場の現実だけがそこにありました。
電話を切った後、不思議な気持ちになったことを今でも覚えています。転職への希望が消えたというより、日本のサラリーマン社会の現実を突きつけられたような感覚でした。周囲に転職している人が少ない理由も何となく理解できました。
家のローンがある。子どもの教育費もある。老後資金も準備しなければならない。その状況で収入減を前提とした転職を選ぶことは簡単ではありません。
私はその日を境に、一度転職について考えることをやめました。そして再び目の前の仕事に全力を注ぐことにしたのです。
第2章 5年後に訪れた人生の転機
それから5年ほどが過ぎました。
転職について考えることもほとんど無くなっていました。むしろ今の会社で最後まで働くのだろうと無意識に諦めている自分が居たような気がします。
そんなある日、何気なく見ていたネットニュースで地元スーパーの記事を目にしました。その会社は私が子どもの頃から利用していた地域密着型のスーパーマーケットで、本社を新しく建て替えるという内容でした。
記事を見た瞬間、なぜか心が動きました。
「あれ、この会社で働くという選択肢もあるのではないか」
今振り返っても不思議な感覚です。それまで転職について考えていなかったにもかかわらず、そのニュースがきっかけで止まっていた歯車が再び動き始めたのです。
5年という時間は想像以上に大きな変化をもたらしていました。仕事面ではキャリアの終点が見え始め、役職定年も現実的な話になっていました。一方で家庭環境も変化していました。子どもは成長し、教育費の見通しも立つようになりました。住宅ローンも終わりが見えていました。
何より大きかったのは価値観の変化です。
若い頃は収入や役職が重要でした。しかしアラフィフになると、それだけではなくなります。家族との時間や生活の豊かさ、住み慣れた地域で働けることの価値が見えてくるようになります。
当時の私は片道1時間半以上かけて通勤していました。社会人生活の最後の10年を考えた時、地元で働く人生も悪くないと思うようになっていたのです。
気が付けば私はその昔から馴染のスーパーマーケットの「今」について調べ始めていました。店舗を見に行き、企業情報を集め、将来の展望を考える。調べれば調べるほど、「ここで働きたい」という気持ちが強くなっていきました。
ところが一つ問題がありました。
正社員募集が無かったのです。
普通ならそこで諦めるかもしれません。しかし私は人事部へ直接連絡することにしました。そして履歴書を送り、自分の経歴や想いを伝え、面接をお願いしました。
そして書類審査→1次面接→最終面接を経て半年後に入社することができました。
他の会社は一社も受けていません。もし不採用だったら、そのことは誰にも言わず今の会社で定年まで働くつもりでした。
それでも挑戦したのは、「ここしかない」と思える会社に出会えたからです。
第3章 オンリーワン転職という考え方
振り返ってみると、私の人生には一つの共通したパターンがあります。
それは、自分が本当に行きたい場所を決めた時に力を発揮するということです。
大学受験もそうでした。絶対に行きたい大学を一つ決め、その大学の過去問を徹底的に研究しました。周囲からは難しいと言われましたが、その大学に合わせた勉強を続けた結果、合格を勝ち取ることができました。
転職も同じでした。
入りたい会社を決める。徹底的に調べる。その会社が求めているものを考える。そして自分が提供できる価値を整理する。
私はこれを「オンリーワン転職」と呼んでいます。
世の中には100社応募して1社に受かるという転職スタイルもあります。それを否定するつもりはありません。しかしアラフィフ世代の場合、それだけでは難しいケースもあります。
年齢、給与、勤務地、家族の事情。様々な条件が重なり、求人票だけでは理想の転職先が見つからないことも少なくありません。
だからこそ、自分で未来を選びに行くという考え方も必要なのではないでしょうか。
実際、今回入社した会社には募集がありませんでした。つまり転職エージェント経由では辿り着けなかった可能性があります。
よく考えると、同じ業界への転職であれば、業界のことを一番理解しているのは自分自身です。会社の将来性も、競争環境も、現場の課題も、自分なりの見方があります。
その理解を武器にして、自分が本当に行きたい会社へ挑戦する。
それがオンリーワン転職です。
求人票の中から選ぶ転職ではなく、自分で道を切り開く転職と言っても良いかもしれません。
もし今、転職サイトを眺めながら「良い求人が無い」と感じているのであれば、一度立ち止まって考えてみてください。
本当に行きたい会社はどこなのか。
本当に実現したい人生はどんなものなのか。
その答えが見つかった時、転職活動は単なる仕事探しではなく、自分の人生を再設計する時間へと変わっていくはずです。
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